Macが立ち上がらないとお困りの高木氏。壇上にマッツ氏が向かおうとしたときにMacの起動音が会場に響き渡った。
解像度設定で困ったりしながらも、なんとか定刻に開始。
高木さんは始めに「裏番組のことを言うのもなんなんですけど、隣の部屋では“WEBスタンダードの神”神森さんがいらっしゃるのに、
ここに来る人は物好きというか…」と。
高木さんは元々はセミナー屋さんで、自分の持っている技術を惜しみなく外へ外へ押し出してきた人で、彼を師とあがめる人は、
僕以外にも日本はおろか世界中に何兆人といるはずだ。ひょっとしたら宇宙のどこかの星にもファンはいるかも知れない。
「読み原作ってきたんですけど、役に立たないってのは分かり切っていますから…」と原稿を持ち「でも一応読みますね。
みなさまこんにちは。高木敏光と申します。」会場笑い。
高木さんはまず、クリムゾンルームの生い立ちとそれを取り巻くストーリーについて教えてくれた。
「アレは忘れもしません。2004年のバレンタインデーのことです。それまで僕は毎年少なからずチョコレートをもらってたんですけど、
その年に限ってはゼロだったんです。そのときに、plasmaってソフトを紹介してもらって…」
plasmaはFlash書き出しに対応した3Dソフトで旧discreet(現autodesk)から発売されてる。
紹介されたソフトでそれとなく部屋を作っていたら、それをゲームにするとおもしろいんじゃないかと思いついた。と。
プログラム自体はすぐにでき、いつものサイトに公開した。
脱出できた人は高木さんにメールを出せるようになっていて、その反応を見てみたが、
公開後3日ぐらいはメールも少ししか来なかったんだそうだ。ところが…
ある夜突然メールがドバーって届いた。すべて英語か何かで書かれてあって、
ドメインからヨーロッパの方の国だとわかった(国名わすれちゃった)。1時間で300通ほど。明らかにスパムじゃなく、
本文を読んでみたら褒め言葉がちらほらと。
そして少しして別の国からドバーっと、また少しして別の国から…こんな感じでコンテンツが世界をぐるっと一周して、
時間差で届く各国のメールで高木さんは眠れなかったんだそうだ。
ところが、ある瞬間からメールがぱたっと止んでしまった。調べてみたら、あまりにアクセスが殺到するから、
サーバーが耐えきれなくなり落ちてしまったんだと。
「お、やったね!って思いました。」
僕らの仕事はコンテンツで人をあっと言わせる事だから、やっちまったと頭を抱えるよりガッツポーズとなるわけだ。
翌日、普段は会社を午後出勤とかしまくるのだけど、今回は意気揚々と定時に出勤したらしい。そこへ、サーバー管理者が青い顔して飛んできた
「なにやってくれたんですか。」「この話は今日の営業会議でしますから。」と。
その日の17:30からの営業会議で高木さんはこってり絞られたらしい。
「何を公開したんだ。」
「何ってゲームですけど」
「エロか!」→会場爆笑
高木さんの理解者である社長はこの日、出張でいなかったため、さんざん責め立てられたらしい。
翌日、社長から呼び出された高木さんは意気揚々と社長のもとへ。「お前がやったことのすごさは認める。しかし、
やるからには会社に稟議書を出してからにしてくれ。」これが高木さんにとっては意外だったらしい。
奇しくも初代クリムゾンルームは、公開してすぐにサーバーから消されてしまった。
それを高木さんは飲み友達に話した。その友人は仲間に声をかけ、新しいサーバーを見つけてきて用意した。そしてクリムゾンルームは復活した。
すぐに世界中からの反応がメールで届き、仲間と祝杯をあげていたときのこと。高木さんの電話が鳴った。
「ヤ○ー!ってのはたち悪いっすよね。うちからは連絡できないのに、向こうからは連絡してくるんですよ。日曜の午後とかでも。」
ヤ社からの電話の内容はこうだった「やめてくれ!」と。
「レンタルサーバーっていうのは長屋なんですよね。うちに来ている人が玄関にくさい靴をならべてしまっているので、
他の人が入ってこれない。そういう状況になっちゃったんですよ。」
ヤ社はクリムゾンルームをアクセスできないように設定した。1週間ぐらいだったか。落ち着くまで。
会社を追われ、ヤ社にも追われたクリムゾンルームは、また別の知り合いが見つけてきた、回線の太いサーバーで3度目のリリースを果たす。
それが、今のファスコのサイトである。
そのころに2作目のビリジアンルームを公開する。
「おもしろかったです。公開数時間前に2ちゃんねるでスレッドが立ったんです。そこでみんなが“たばこ用意したかー”
“トイレいっておけよー”ってやってるんですよ。で、結局公開が都合で数時間遅れたんですが、
公開後すぐにゲームのクリア状況が書き込まれていくんです。」
メールとは違った興奮でまた眠れなかったらしい。
(今書いていて思った。ひょっとしたらビリジアンルームとヤ社の行動は前後しているかも知れません)
高木さんセミナーの半分ぐらいがこのストーリーだったけど、話す内容にはコンテンツに対する愛情とか、
高木さんの思想が反映されているので、みんな楽しく聞き入っていた。
時間も迫ってきているので、いよいよソースの解説に入る。
まず、知らない人のためにクリムゾンルームを1回解く。それをふまえて解説を始める。
コンテンツソースの話はここでしても仕方がないので割愛するけど、ごくごく簡単なプログラムで構成されてあり、
高木さんも言っていたけど「スクリプターからすればどってことないですよね」って感じだった。
しかし、よーく見ると小さなアイテム一つ一つが3Dでモデリングされてあったり、方々にコンテンツに対する愛情が詰まっている。
これぞタカギズムである。
クリムゾンルームの最大のイベントである「踊る男」のソースも公開された。これはすごかった。
自宅居間にビデオカメラを設置して、あるラジオ番組の紹介を流し、そのナレーションに合わせて高木さんが踊り、
それをPCに読み込んで輪郭を1フレームずつトレース(なぞる)したものだった。
動画って1秒で30フレームある。半分にしても15フレーム。動画は数分続いていた。
仮に15フレで作っても2700枚の絵を描くことになる。
その一部をクリムゾンルームに採用したというわけだ。
各種ハックに対する対策も公開され、次回作の予告も行われた。
一通り解説が終わり「誰でも作れることを証明したい」と高木さん。
なんとその場でミニムゾンルームを作り始めた。
アイテムを見つけると、それがスロットに追加されるというアクションをその場で作成。動作させる。
「これの組み合わせですよ」と。
そして「いまこんなんやってます」といくつかのムービーを披露。「弾き語りってあるじゃないですか。アレに似た“ムビ語り”
ってあってもいいんじゃないかと思って。」とムビ語りを披露。
「自分の声をムービーに入れたことがある人ってどれぐらいいますか?」と。
僕はその昔、スズエってムービーで自分の声を入れたことがある。4段配列のキーボードの1段ずつに「ス」「ズ」「エ」「スズエ」
の声がたくさん入っていて、キーを押すと発音するってやつ。公開しようか?僕の親とか見たら「やっぱり息子は変態だった!」
って頭を抱えるかも知れない。しかし、これこそがタカギズム!愛ムビ無罪!
で、質疑応答へ。あらかじめ募集されていたものを公開していく。
Q:「ザゼンボーイズ買いました」
A:「これはインサイダーですね」
Q:「次回作の勉強に来ました」
A:「僕がシナリオで、オーサリングは別の方なんです。その人ですね。」
Q:「コンテンツで利益を得る方法は?」
A:「携帯電話かなぁ」
Q:「影響を受けたクリエイターは」
A:「いない。文学少年なので○○とか○○とか○○とか」(作家の名前がたくさん出てきた)
こんな感じの質疑応答があり、まだ時間があるというので現在の作曲の手法を披露。Macのソフト「SOUND TRACK」
でやっているらしい。「こういう便利なのがあるんですから、みんな使いましょうよ。サウンドトラックとかアシッドとか」。
そして、「じゃ、このへんで」と終わりを告げた瞬間に、チャイムが鳴った。見事すぎるジャスト。
セミナー後皆が激励に駆け寄る。なかには“神の中の神。いわゆるゴッドオブゴッド”大重美幸大先生がいらっしゃった。名刺ゲット。
噛みつつも(だって、
すっげーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえらい人なんだよ。
演歌界で言う美空ひばりの北島三郎乗だよ。)「岡本です。あ、はげです。」と自己紹介。はげで通じた。
セミナー後は昼食なので、僕は同僚のS氏の知り合いたちと近くの回転寿司へ向かった。
高木氏たちは会場の外の噴水前で酒盛りしてた。
今回のセミナーで一番印象に残ったのは
「世界に向けてコンテンツを発信するんだから、日本語だけでなく、英語版も作りましょうよ。合ってなくていいんですよ。
通じればいいんですから。間違ってたらそのうち誰かが教えてくれますよ。」
高木さんのルームシリーズははじめから日本語と英語が切り替えできるように作られてある。自ら「稚拙な英語だけど」といいながらも、
そのコンテンツははじめから世界をターゲットにしていた。もし、
日本語だけだったらああやって地球をぐるっと回ることなどなかったかも知れない。
高木さんはクリムゾンルームがきっかけで独立。株式会社タカギズムを立ち上げた。
そのうえさらに、クリムゾンルームを作ってしまった。リアルで。
そして、コンテンツがブラジルに渡って、新聞に載ってしまったりした。ポルトガル語よくわからん。
久しぶりの高木さんセミナーだったけど、ぜんぜん衰えていない。またやって欲しい。飛行機で行くだけの価値って言うか十分ある。
次はセミナー後半。
Captivate、Flashチーム制作のワークフロー、MTと続き、「部活」という名の懇親会へと続く。