※船酔いに関する記述があります。そういうの苦手な方は読まない方がいいです。読んで気分を害したりしたとしても、責任持ちません。
6時ぐらい起床。
同室のS氏と共に朝食を食べに行く。
レストランが改装中とかで、馬鹿でかいバンケットに通される。
クロワッサンとサラダとトマトジュースをとって、用意された席に戻るとなぜか料理が並んでいた。
S氏に「なんか、ならんでるよ。」と。
S氏もびっくり。
気にせずテーブルに持ってきたものを並べていると、オバハンがやってきて「なにしてるの?」みたいなことを言ってくる。「ここ、
僕らの席なんですけど。」と答える。
オバハンは目を合わさずブツブツ消えていった。っていうかお前、チケット渡してないだろ。
食事中、S氏の妻がすっ飛んできて「なにやってるの!」と。
「朝飯食べてんだけど」と答えるS氏を待たずに「7時に迎えにくるって言ってたでしょ!」と。一緒に朝食を食べる約束をしていたらしい。
「それは、由々しき問題ですな。」とフォローにならないコメントを差し上げ、僕は黙々と食べ物を口に運ぶ。
妻がどこかに行って、S氏は足りないのかまた何かを取りに行ってた。そこへ妻がスタスタと駆け寄り…
脇腹に一発見舞っていた。
僕は2杯目のトマトジュースを一気飲みして、席をあとにしようとしたらS氏が「ごめん、あっちで食うわ」と。それは仕方がない。
僕は出るときに紙ナプキンを何枚か拝借した。
部屋に戻って機材をセットアップ。もてるものを片っ端から詰め込んで出発。
ホテルに置いてあるレンタカーに乗り、離島桟橋と呼ばれるところに行く。
途中、レンタカー事務所に車を預け、そこから徒歩。
チケ屋が見つからないけど、うろ覚えの船舶会社の事務所に入り、波照間往復の切符を購入。
指定された船に乗り込む。
すぐに出航。
60分ぐらいで着くという。
途中、いろいろな島が見えた。西表の近くではスコールのような雨が降っていた。
僕はだんだんと手にしびれを覚えた。呼吸が荒くなってきた。意識がもうろうとしてきていた。気がついたら、
手に持っていたハンドタオルを落としていた。
拾おうとしたけど思うように体が動かない。経験ですぐにわかった。船酔いだ。洒落にならない。かなりの重症だ。
すぐさま船の揺れに合わせたかのように吐瀉物が口まであがってきた。とっさに口をつむって、吐き出すのを抑えた。
飲み込むとさらに吐きそうなので、幸いにも外を見ることができる、後部デッキに移動することにした。
雨のせいで後部デッキはビショビショ。揺れでまっすぐ歩けず、這うようにして乗降口に立った。
船の揺れに合わせて口にたまってた吐瀉物を思いっきり外に飛ばす。が、横風に流されて、うまく遠くに飛んでくれない。
「ここじゃダメだ。」僕は一番後ろに移動した。
瞬間、ものすごい吐き気を覚えて、胃がひっくり返るぐらいに吐いた。隣に人がいたが(おそらくその人も船酔い体質なのだろう)、
お構いなしだ。彼は僕の雰囲気を察したのか、別の場所へ移動していた。
何度吐いたか覚えていないが、西表島が遠くにかすんで、晴れ間がのぞき始めた頃、やっと落ち着いた。雨か海水かでぬれた手で、
口のあたりをぬぐって、すぐにハンドタオルで拭いた。
服は上下びしょぬれだった。でも、それはそれで構わなかった。
10分ぐらいして波照間島に到着。
僕は他の人が降りるのを待って、機材を取りに行った。僕が座っていた席に、サングラスとGPSが置かれてあった。
気がつかない間に落としていたらしく、隣の初老の夫婦が拾ってくれていたのだろう。
船を下りて、とりあえず人のいないところまで歩いて、海を見ながら大きく深呼吸した。
まだ少し酔っている気がするが、この島には7時間しかいられない。すぐにでも行動を開始する必要があった。
適当なレンタサイクル業者に声をかけ、車に機材を乗せる。
「すごい荷物やね。これで自転車に?」
「バイクもあるの?」
「あるよ」
「バイクにしようかな。」
車はゆっくりと走り出した。僕以外には若い夫婦がいた。時代遅れのペアルックだ。
「石垣は雨だったさ?」
「いや、西表あたりかな。」
「そうかぁ」
「船で酔ってしまって、西表で雨が降ってたのだけ覚えてる。」
車がゆっくり減速して、「あの木、モンパの木っていう。あそこ右にはいると、ニシ浜。」
車は左折してサトウキビ畑の中を行く。また減速。「あの黄色い屋根。おみやげ屋さん。」
車はまた左折して減速。「ここが、ご飯やさん。青空食堂。」
少ししてまた減速「あ。今日は土曜日か。あそこ定休日ね。で、ここが売店。」
売店の名前は冨嘉部落っていう。
集落の中にレンタサイクルやさんがあった。
先に夫婦に手続きをしていてもらう。僕はバイクが「チョイノリ」だったので、すごい興味を持って「バイクにするよ。」と伝えた。
「免許は?」
「普段1000ccに乗っている」
「それはすごいさ、この人1000ccに乗っているんだと」と近くの奥さんに報告している。
夫婦が出かけていって、僕は書類に名前を書いた。思わず実家の住所を書いてしまったけど気にしなかった。免許証を見せて4000円を支払う。
「農道よりひどい道には入ってはいけないよ」と注意され、僕はチョイノリに乗った。
リジッドサス。35km/hで悲鳴を上げるエンジン。なかなか楽しい乗り物である。
ニシ浜について写真を撮影。
すぐに引き返してぺ浜を探すが見つからず、気がついたらペムチ浜にいた。忠告を破り、道なき道を突き進み、
バイクに乗ったまま風景を撮影していく。
肩から提げたカメラバッグにGPSをセットし、首から提げたカメラに常に位置情報を送信する状態である。
ペムチ浜をあとにして、最南端の碑へ。山羊が服を食べにくる。さわっても平気。
そこをあとにして空港方面へ向かったら、牛の大群が道路を占拠していた。
空港は誰もいないので、手前で集落方面に折れる。そして道に迷う。
目印として、大きな風車がある。そのあたりが島の中心地であることがわかる。中心地を目指して集落を抜け、適当な日陰にバイクをおき、
集落の写真を撮っていたところで鼻に違和感を覚えた。
ぬるっとした感触に思わずさわった指を見たら血がべっとりと付いていた。そして、独特の鼻血の感覚。
量が半端じゃなくあっという間に立っていたところが血に染まる。周りを見ても誰も助けてくれない。っていうか誰もいない。
家は戸や窓が開いてはいるものの人の気配はない。
ホテルで拝借した紙ナプキンを思い出した。カメラバッグの書類入れに入れてある。
僕は血だらけの手でナプキンを取りだし、適当に丸めて鼻に詰め、思いっきりそれを傷口と思われる場所に押さえつけた。
すぐさま出血は止まった。
手とか、靴が血に染まってた。僕は気にせず旅を続けることにした。
集落を抜けると「モンパの木」って店が目についた。おみやげ屋さんらしいが、興味がなかったのでスルーした。
そんな感じで島内を何周も回った。
モンパの木の前は4〓5回通った。
11時ぐらいになって、飯やさんを探したが、見つけたところは12時からだった。僕は島をもう1周してくることに決めた。
知らない道を行ってみた。最南端の地でしばらく休んだりしているうちに、2時を回っていた。店に戻ると閉まっていた。
12時から14時しかあかないらしい。
僕は船着き場に小さい店があるのを思い出し、そこに向かった。トイレを借りて、手を洗って、世間話が好きそうなおばちゃんに「そばひとつ」
と頼んだ。
コーレーグースがずらりと並ぶカウンター。「泡波」ってラベルが貼られているが、変な名前の泡盛だなと気にもとめなかった。
すでに15時前。船は16:30で16時に返却の予定だ。
ラスト1周と言わんばかりに、集落を横切って外周道路を目指す。
そうだ。
酔い止め薬を買い忘れていた。
適当に見つけた売店に寄ってみると、閉まっていた。開いている売店を探して島内をうろついて、
やっと見つけたところで薬がないか聞いてみたら置いていないという。
置いてある店は冨嘉売店と○○売店だけだという。しかし、それらは今は閉まっているという。
どの売店も昼過ぎから休憩に入り、15時過ぎまで閉まっているのだという。
僕は冨嘉売店のあたりの集落をうろついて開店を待った。
地元の少年らに顔を覚えられた頃、冨嘉売店がやっと開いた。
薬とお茶を買った。
僕はお茶を少し飲んで、ニシ浜に最後の写真を撮りに行った。
西表には積乱雲が立ちこめ、その周りは雨雲が発生していた。あまりいい景色じゃないけど、何枚か撮影して、バイクを返しに行った。
返却しながら世間話。「なんの仕事してるの?」って言われたので「教科書用の写真を撮っている」と答えた。
その場で薬を飲み、必要な機材いがいを鞄に詰めて車に乗せた。
少しして夫婦が戻ってきて、港まで送ってもらえた。
「16時だよ?なのに太陽がこんなに高い。」
「日没は19時半ぐらいよね?」
「そうそう。詳しいね。あんた。」
伊達にプロじゃないですから。ってコメントは口にしなかった。プロは船酔いなどしないからだ。
船着き場の待合室で時間をつぶす。
しばらくして船が入ってきた。皆一斉に桟橋に移動する。
会社違いの船がほぼ同時にはいるので、ちょっと混乱している。
目的の船に乗り、使わない機材を安定したところに置かせてもらって、僕は20mmを持って後部デッキで写真を撮ることにした。
薬が効いたのか全然酔わなかった。
積乱雲積乱雲積乱雲。虹。海。島島島。積乱雲積乱雲。
途中、トビウオをみた。着水する瞬間が見えないぐらい遠くへ飛んで行っていた。稚魚も飛ぶ。
1時間たったまま、デジカメのバッテリーが切れるまで延々撮影を続けた。
石垣に着いた。
レンタカーでホテルに戻り、ネットに接続した。
泡波の正体を知った。
東京とかでは2万円するって?それをコーレーグースに?
波照間に渡る観光客の目的のほとんどは、泡波にあるという。
波照間で盛んな漁はトビウオ漁だという。なるほど。
真っ赤に日焼けしてるのに気がついた。
靴とかの血は、知らない間に流されていた。ただ、右の靴の樹脂のところには、今でも赤いものがこびりついていてとれない。