八ヶ岳は北と南のエリアに分けることができる。南は毎年死者も出ている山形カット歯ブラシのような険しい稜線でおなじみだけど、北側は蓼科高原をはじめとしたソトコトを地で行くようなロハスでスイーツなリゾート地だ。
今回のミッションは、スノーハイクのゲレンデとしても知られる北側の北横岳の登山口である、坪庭とその周辺のリサーチである。
自慢じゃないのだけど、うちの車はスタッドレスを履かない。滅多に雪が積もらない大阪市に住んでいたからかも知れないけど、スタッドレスを履くという習慣がないのだ。でも、チェーンはちゃんと携行している。なので、大丈夫だとおもって出発した。
蓼科へのアプローチは、中央道諏訪ICである。1つ手前が諏訪南。八ヶ岳へのアプローチがここだ。なのでほとんどルートは一緒なのだ。富士山の脇を抜けて甲府盆地に入ると見えてくるのが、南アルプスの泣きそうなぐらい険しい稜線と、周りがどれだけ晴れていても、そこだけ気象コントロールされているのかと思ってしまう、雲に包まれた八ヶ岳だ。どこまでツンデレなんだろうこの山は。
諏訪から先はあまり知らない道。実際は何年か前の社員旅行で走ったことがあるのだけど、それ以来ということになる。道覚えているかなと心配だったけど、インター出た瞬間に記憶が引き出されて、道に迷うことなくビーナスラインに入れた。ここまで来たらあとはまっすぐ行くだけである。
ビーナスライン沿いには信州蕎麦を出すお店がたくさんある。信州蕎麦と言えば十割だろ。二八なんてどこでも食べられる。せっかく来たんだから十割食べたい。そう思いながら沿道のいろいろなお店を見ては「うーん、ちがう」と言いながら進んでいった。
道がだんだん山道になって、いよいよおそば屋さんがなくなろうとしたところで「石臼挽き」という看板がちらりと目に入った。「お?これは気になる。」と、通り過ぎたのだけどUターン。
別荘地にたたずむ、小さなおそば屋さんを発見した。「しもさか」と書いてある。駐車場は6台ほどあるようだけど、僕以外には1台だけ。しかもその人は店を出てきたようだ。雪が積もった道をノーマルタイヤで走るのも怖いので、一番手前の駐車スペースに車を入れ、店へ向かった。
気温は−5℃ほどか。乾燥した空気と、パウダースノーのせいか、周りはとても静かだ。
店の入り口にメニューがあった。僕は驚愕した。蕎麦が「せいろ」しかないのだ。それ以外は「そばがき」と「おしるこ」。
せいろは大盛りにできるほか、おかわりも可能。もちろん、料金がかかるのだが、その料金がまたすごい。
せいろ:1600円
せいろ大盛り:2200円
せいろおかわり:1200円
そばがき:1200円
おしるこ:1000円
いやまて、きいたことがある。蓼科にとんでもないそば屋があると。メニューが少なく、非常に高い。せいろとそばがきだけという、超強気ともとれるメニュー構成の店があると。
意を決してはいることにした。
平屋の落ち着いた店舗。左手は座敷のようである。玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えて入ると、大きな6人掛けテーブルが1つ、4人掛けのテーブルが2つほどあった。こぢんまりとした空間だけど、窓の外には雪景色が広がり、なんともスローな時間が流れる。
ストイックな感じのする店主に「せいろ」をお願いする。程なくしてそれはやってきた。
むむ...
蕎麦は茨城の契約農家から送られてくる純国産そば粉を100%使用し、石臼で毎日じっくりと挽いているのだそうだ。これで1600円。原材料コストとかかっている手間からすれば、高いとも言い切れまい。
一筋すすってみる。カツオの味がぴんと立っている上品で後味のスッキリした付け汁。蕎麦の香りが負けたりしないかと心配ではあったけど、ほどなくして蕎麦の香りがふっと鼻に通ってくる。なかなかいい体験である。
そば湯は透明感のあるタイプで、上澄みをとっているのかなという印象。いわゆるドロドロ系のそば湯が好みなのだけど、こちらも蕎麦の味がしっかり出ていて非常においしかった。おそらく人生で1,2を争うのではなかろうか。
食事を終えて会計を済ませ、店をでたら来るときは気がつかなかった小川のせせらぎが耳に入った。時には行列することがあるというが、待っている間ものんびりとしたスローな時間が流れるのだろうなと思った。
駐車場から車を出そうとしたら、ものの見事にスタックしてしまい、僕はその場でチェーンをつけて、ロープウェイ乗り場のある駐車場へ車を走らせた。
いやぁ、衝撃的だった。蕎麦が。
実はこのあと、上り坂で突然クルマがスピンするという自体に見舞われた。ブレーキを踏んだりしたわけじゃないのに、いきなりリアが左に流れ始め、カウンターを当てたら思いっきり右に流れて道をふさぐ格好で止まった。他車がいなくてよかった。もしいたらとおもうとゾッとする。
北横岳へのアプローチルートは雪歩きが楽しめる構成になっていて、思わず山頂まで行きそうになったのだけど、今回は蕎麦のインパクトがすごかった。また行くと思う。財布が許すなら、腹一杯食べてみたい。
この価格設定には賛否両論あるけど、一度食べてみればいいと思う。もちろん、ここよりコスパの高い店はたくさんあると思うけど、なにかこう、憎めないのだ。だからまた行くと思う。
調べたら創業は平成元年とか。20年近く続いているのだ。単に強気なだけなら、こうはいかないだろう。
俊樹蕎麦しもさか
長野県茅野市北山4035-1026
TEL&Fax:0266-67-2682
営業:11時30分~16時(不定休)
http://shimosaka-soba.com/

