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2009年12月11日

歩くのが遅いと文句を言われたことについての考察

朝の東京駅。京葉線のホームから東京駅の中央へ、たくさんの人が移動する時間帯。
この日は修学旅行生も混ざっていて、しかもディズニーはクリスマスシーズンでかき入れ時、これから舞浜方面へ向かう人と、東京駅方面へ行く人でごった返してた。

動く歩道は2列が中央方面へ向かい、僕は右側へ。止まる人の列と歩く人の列にいつも分かれていて、僕は歩く人の列の最後尾についた。

混み合っているのでよくあることだけど、後ろの人にかかとを蹴り上げられた。

体が触れあうぐらいのテールトゥノーズ。よくある話だ。朝の東京駅は、誰もがラリードライバー。前が詰まっているので仕方ないよな。と思っていたところ、エスカレーターに乗り換えるところで後ろから「歩くの遅いんだよ!」と怒られた。前が詰まっているのに。

声の主であるおばはんは僕を抜きざまに睨み付けた上、隣のエスカレーターの右側に乗ってた。そして今度は別の人を煽っていた。そしてパン屋にきえていった。おばはんが僕を抜くことはなかったのである。そう、どのルートを選定したところで、おばはんは速度を上げることはできなかったのである。
何とも気分の悪い朝である。

前が詰まっているので「歩くのが遅い」と言われたところで、仕方が無いのである。本当に急いでいる人は動く歩道を使わず、普通に走っている。つまり、 おばはんは本当には急いでいない。走るのが面倒なのだろうな。あるいは自分のペースを乱されたくないのだろう。

しかし、前が詰まっているのに、たまたま最後尾にいた僕に暴言を吐くのはなぜなんだろう。たった1m先が詰まっていることぐらい、ちょっと見ればわかることなのに。

しかもおばはんの目的地はパン屋だ。パンを買う時間を得るために急いでたのだろうか。

運良く僕は、東京駅から大手町まで比較的長い時間歩くので、十分考察する時間があった。ので、考察してみたわけだ。

おばはんは急いでいた。でも、本気で急いでいたわけじゃない。これはおばはんが動く歩道上で歩いていたことから推察できる。本当に急いでいるなら動く歩道を使わないから。でも、走るのは面倒くさい。つまり、急いでいるけど、体力には余裕がないのだろう。

しかし目的地はパン屋さん。朝ご飯を抜いて出てきたのだろう。金曜日ということもあり、3連休としてどこかに旅行にでも行くのだろうか。おそらく東北方面?ひょっとしたら丸の内あたりのOLかもしれないな。とにかく、おばはんは急いでパンを買う必要性に駆られていたのだ。

京葉線ホームからの動く歩道は、所々でインターバルがある。そこがオーバーテイクポイントだ。
様々な人がオーバーテイクを仕掛けるため、対向の人とぶつかったりすることもしばしば。でも誰も他人に気を遣わない。タイムカードを9:29に押せるかとか、お客様を待たせてはいけないとか、そういった事情の前には他人などどうでもいい存在になる。

おばはんが僕に文句を言ったところから察するに、おばはんはずっと僕のスリップストリームについていた。そして時折オーバーテイクしようと試みたのだろう。しかしそれはかなわなかった。
僕自身も歩くのは速くて、前の人にスリップストリームについていた。朝の時間帯は皆の実力は拮抗している。こんなところで無駄にオーバーテイクを仕掛けて空気抵抗をもろに受けて燃料を消費するよりは、後ろについてパワーを温存しておき、エスカレーターで一気にぶち抜く。これが僕のトウキョウステーションストラテジーだ。

インターバルのところでほんの少し、わずか5歩程度走るだけで、数人をごぼう抜きすることができるのだが、おばはんは走らなかった。面倒だったのだろう。5歩走ることすらできないなんて、本当は急いでいなかったのだろう。あるいは膝を壊していたのか?だったら早歩きなんてできない。

数度のオーバーテイクのチャンスも実ることはなく、おばはんは僕の後塵を浴び続けた。レーサーとしてあるまじき屈辱に駆られた。常に見え続ける男の背中。恋人でも愛人でも夫でもない収入の低そうな男の背中を、なぜ追い続けなければならないのか。
おばはんは見えている背中に憎悪を抱くようになる。もう、前が詰まってるとかどうでもいい、その背中が憎い。

動く歩道ゾーンが終わってエスカレーターへ。ここで2列から3列になり、一気に渋滞は解消する。
ここで抜かないと一生後悔する。おばはんは残っている体力をすべて使い切り、ついにオーバーテイクに成功する!
そしてたまりにたまった憎悪を僕にぶつけたわけだ。

そして僕がいるレーンの隣のエスカレーターを登り始めた。しかしそこにはおばはんの宿敵、ファッションは自分と大して変わらないのにメディアにちやほやされまくっている、森ガールがいた。森ガールはノロノロとエスカレーターを登っている。森ガールだもん。自らの限界へ接近する行為(登ると森林限界に接近するため)に、速度を上げるわけがない。これはしかたがない。

僕に文句を言った手前、自分の方が先に登り切らなくては格好がつかない。しかしこちらはスリップストリーム体制を維持してトップアウト。

ここへきておばはんは本来の目的であるパン屋に行くという目的を思い出したわけだ。自己の精神崩壊を未然に防止する、保護回路が働いたのだろう。
パンさえ手に入れば、背中も、森ガールも、どうでもよくなる。とにかく、パンが手に入れば。

しかしおばはんはその時点で、パンを買うためにはレジに並ぶという行程があることを忘れてしまっている。自己の精神崩壊を未然に防止する、保護回路が働くためだ。パンを買うためには列に並んだりレジで会計する必要がある。なんて考えていたら、パンを買うこと自体が面倒になってしまう。パンが買いたいのに買うことが面倒になってしまう。パンがないと死んでしまう。どうしても必要なパンを得るために、保護回路は途中のプロセスを無視する。そうすることで、精神に負荷をかけることなく、パンを手にすることができる。

目的のために、途中何をすべきなのか、何を考えるかは一切無視される。これって普段よく見かける「10円安いバナナを買うために車で10km走っていく」ような行動にもつながってくると考えられる。

とにかく目的を達成したい、そのためだったら...となるわけだ。たまたま居合わせた人からしたら迷惑にもほどがある。

おそらくおばはんは、その後レジに並んでいる人や、レジに対して文句を言うのだろう。そしてきっと他のところでも、別の目的で同じようなことを繰り返すのだろう。いつか自爆する日まで、それは続くのだろう。

以上が今朝であったおばはんに対する考察だ。もしおばはんが見ていたら、事の真相を話してくれるとありがたい。とにかく最悪な週末のスタートを切って、正直げんなりしたのだ。
そして考察を続けるにつれ、僕も誰かに迷惑をかけているのだろうなと思ったら、ますますげんなりしてしまったのだ。気をつけたい。

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